人も物語も、じんわりほどけていく『カフネ』

小説
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カフネ [ 阿部 暁子 ]
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内容☺︎

最愛の弟が急死した。29歳の誕生日を祝ったばかりだった。姉の野宮薫子は遺志に従い弟の元恋人・小野寺せつなと会うことになる。無愛想なせつなに憤る薫子だったが、疲労がたたりその場で倒れてしまう。
実は離婚をきっかけに荒んだ生活を送っていた薫子。家まで送り届けてくれたせつなに振る舞われたのは、それまでの彼女の態度からは想像もしなかったような優しい手料理だった。久しぶりの温かな食事に身体がほぐれていく。そんな薫子にせつなは家事代行サービス会社『カフネ』の仕事を手伝わないかと提案する。

食べることは生きること。二人の「家事代行」が出会う人びとの暮らしを整え、そして心を救っていく。

感想☺︎

本屋大賞に選ばれる作品は、読みやすく、なおかつしっかりと面白いものが多い印象があり、毎回手に取るようにしています。

『カフネ』もその期待を裏切らない一冊でした。

読み始めた当初、主人公には正直あまり良い印象を持てませんでした。

けれど物語が進むにつれて、その印象は少しずつ変わっていきます。

不器用ながらもパワフルで、前に進もうとする姿に、いつの間にか惹かれていました。

登場人物たちもそれぞれに魅力があり、文章を追ううちに「こんな人だろうな」と自然と姿が思い浮かびます。

誰もが少しずつ欠けた部分を抱えながら生きていて、その描写がとても丁寧だと感じました。

そして印象的なのが、物語の中に登場する食事の描写です。

派手ではないのに、なぜか心に残るご飯の場面が多く、読んでいるこちらまで温かい気持ちになります。

物語の随所に散りばめられた出来事や言葉が、少しずつ回収されていく構成も心地よく、読み終えたときには静かな満足感が残りました。

読みやすさの中に、きちんとした余韻がある。

『カフネ』は、そんな一冊だったと思います。

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