内容☺︎
森で暮らす小鬼は、弟を探して迷い込んだ少女・民と出会う。
過去見の術を使って弟がいた過去世を見せるが、その為に民は錯乱し、身内に『鬼の芽』を生じさせた。
鬼の芽は、破裂し、非道を働けば、地獄に落とされ、現世へ二度と戻れない。
だから小鬼は、生まれ変わる度に生じる鬼の芽を、千年にわたって、摘みとる業を自ら望んで背負うことに……。
人の心の機微を、気鋭の著者が描く、ファンタジー小説。
感想☺︎
物語は一話ごとが短くまとまっていて、少しの時間でも気軽に読めるのが魅力です。それぞれの話が独立しているようでいて、少しずつつながっていく構成に引き込まれました。静かな語り口なのに、言葉のひとつひとつが不思議と胸に残ります。
登場する3人の小鬼がとても可愛かったです。想像の中で彼らが並んで座っている姿が浮かんで、可愛らしさと少しの切なさを感じました。
小鬼たちが民を思う気持ちはとてもけなげで、純粋です。悲しみの中にも温かさがあり、優しさの中に静かな強さがある――そんな絶妙なバランスで描かれた世界が、とても心地よかったです。
読後には、静かな余韻が長く残りました。小鬼たちの小さな声が、どこか遠くでそっと続いているような感覚。
『千年鬼』は、静かに心をあたためてくれる一冊でした。


コメント